冬の北アルプス、それは登山者にとって憧れの領域のひとつではないでしょうか。簡単には行けない、というより近づくことすら難しい世界です。
そんな世界に唯一、容易にアプローチできる場所があります。岐阜県の新穂高温泉から新穂高ロープウェイに乗って千石平へ上がると、目の前に西穂高岳の山並を見ることができます。
このロープウェイは通年運行なので、冬でも簡単に標高2156mの展望台に立つことができます。そして、天気が良ければ西穂の雪景色を堪能することが可能です。
とはいえ、冬、山が雪に覆われているということは大量の雪が降るということ。それだけ天気が悪い日が多いということです。当然、天気が悪いと絶景に出会うことはできません。
私がこの場所を訪れたのは、2001年2月に冬山初心者向けのツアーに参加したときでした。新穂高温泉の宿に泊まり、ロープウェイで千石平へ。そこで雪山装備を整えて西穂山荘まで上がり、その近くの丸山(2452m)まで行きました。
空はどんより曇っていて、ときおり一部に青空が見える状態。西穂山荘までは樹林帯なので風の影響が少ないのですが、山荘から上は稜線に出るので冬山特有の強風に襲われます。
そのため、ツアーリーダーの「雪山初心者の体験ツアーとしては、ここまで」という判断で丸山から下山となりました。そのときは「もう少し上まで行きたい」と思いましたが、やはり的確な判断だったと思います。
今回の写真は、このツアーの折に千石平の展望台から撮ったものです。西穂高岳の山頂部分はガスに溶け込んでいます。このとき西穂の山頂にいたとしても、周囲の景色は何も見えなかったでしょう。
雪山で展望が良かったら、それは奇跡の瞬間だと思います。真っ白で周囲が見ない、さらに雪が降ったり強い風が吹いたりして危険にさらされている。むしろ、それが普通くらいに私は認識しています。朝は天候が良くても、昼には急速に悪化するといったことも珍しくありません。
ロープウェイで千石平へ上がるだけなら、冬でも観光の延長で行くことが可能だと思います。ただし、雪や氷で滑りにくい靴を履いて、十分な防寒対策をして行きましょう。一歩でも登山道へ踏み込むなら雪山装備を整えましょう。
撮影場所:千石平
撮影日:2001/2/25
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