【今週の1枚】落葉が彩る晩秋の渓流

山の秋といえば紅葉。ですが、その表現にはいろいろな方法があります。今回の1枚のように、落ち葉にフォーカスしても秋を表現することが可能です。

ただ、この写真は何げなく撮っているようで、実は少しテクニックというかネイチャーフォト撮影の基本的な技術を使っています。スマホで撮るのは難しいですし、デジタル一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラでもオートモードでシャッターボタンを押すだけでは同じように撮れません。

ポイントは、手前の落ち葉から奥の落ち葉までピントが合って見えることと、水が白く流れているように見えることです。

撮影モードの違いを理解して使い分ける


風景写真や山岳写真、花や木の写真を撮るとき、一眼カメラや高機能なコンデジ(コンパクトデジタルカメラ)では絞り優先オートを使うのが基本だと思います。

こうしたカメラは、モードの切り替え(たいてい、カメラ右上のダイヤルで操作する)で、オート(AUTO)のほかに、P、T、A、Mといった設定を選ぶことができます。メーカーや機種によって表記が違ったりしますが選択肢は同じです。

Pはプログラムオート、T(またはS)はシャッター速度優先オート、Aは絞り優先オート、Mはマニュアル設定を意味します。マニュアル設定で適正な写真を撮るのは難しいので、通常はプログラムオート、シャッター速度優先オート、絞り優先オートを状況に応じて使い分けます。

最も操作が簡単な、そして操作が制限されているオート(AUTO)だと、完全にカメラ任せの撮影になります。今のカメラは性能がいいからカメラ任せで良い写真が撮れる、と思っている人もいるかと思いますが、実はカメラにとって都合のいい写真、誰が撮っても同じような写真になってしまいます。

これをPモードにするだけで、露出補正など基本的なテクニックを使えるようになります。いつもオートで撮っている人は、まずオートを卒業してPモードで使える機能を試してみるといいでしょう。

さらに本格的にネイチャー系の写真を撮るなら、絞り優先オート(AやAv)による撮影技術を習得しましょう。これによって、狙った被写体にピントを合わせて背景を大きくボカしたり、逆に手前から奥まで全体にピントが合ったように見せるといった表現が可能になります。

ただし例外は、水を撮るとき。たとえば滝や渓流の撮影です。この場合は、シャッター速度優先オートを使う人が多いと思います。

シャッター速度を変えて水の流れを表現する


昔から滝の写真の定番は、シャッター速度を遅く(長く)して水の流れを表現する撮影方法です。今回の渓流の写真も、同じ手法で撮っています。

ただ、こうした手法が広まった背景として、昔はフィルムの感度が低くてシャッター速度を上げられなかった、しかも低速シャッターにすると被写界深度が深くなる(手前から奥までピントが合って見える)ので風景写真に適しているといったこともあったのではないかと思います。逆に、この撮影方法のデメリットは三脚が必要なことです。

カメラの性能が上がり、しかもデジタルになって高感度撮影(ISO感度を高くする)が可能になり、手振れ補正が進化した今は、あえて高速シャッターで水の流れを止めるという撮影方法もあります。イメージとしては、葛飾北斎の浮世絵『神奈川沖浪裏』のように水の一瞬の姿を切り取ります。

さらに、シャッター速度を段階的に変えることで水が止まった状態から白く流れている状態まで撮れるので、同じ構図でシャッター速度を変えながら何枚も撮って、あとでベストな1枚を選ぶといったことが可能になっています。

高性能カメラは意図した写真を撮る道具


ただし、シャッター速度を短くすると比例して被写界深度が浅くなる(ピントが合って見える幅が狭くなる)ので、手前や奥がボケて写ります。また、どこまでシャッター速度を速くできるかはカメラとレンズの性能によるし、撮影場所の明るさも関係します。明るい場所なら高速シャッターが可能ですが、暗い場所や時間帯はシャッター速度を速くできません。

また、シャッター速度だけ考えて極端に速くしたり遅くしたりすると、露出アンダーや露出オーバーになりがちです。その場合、シャッターボタン半押しの状態でカメラから何かしら警告が出るのですが、そのままシャッターボタンを押すと撮れてしまいます。ところが、あとで見ると全体が白く飛んでいたり、妙に暗い写真だったり、そうした失敗写真になっています。

これを防ぐために、水の撮影でもあえて絞り優先オートで撮影することも可能です。絞り開放(F値の数字を最小)にすると、自動的にシャッター速度が速くなります。逆に絞り込む(F値の数字を大きく)するとシャッター速度が遅くなります。私は、この撮り方の方が好きです。

高機能なカメラ、高性能なレンズは、このように自分が意図した写真を撮ることに適した道具です。とりあえず高い機種(本体)を買って、あとはカメラ任せという使い方だと宝の持ち腐れといわれても仕方ないでしょう。

撮影場所:御岳山・ロックガーデン周辺
撮影日:2002/11/14

この場所へ行くのに最適な地図は、

※2023年版の地図情報を準備中です。

三ツ峠山から見た夜明け前の富士山【今週の1枚】黎明の富士

大山タイトル写真1【大山】伯耆富士の稜線で日本海に飛び込むような絶景

関連記事

  1. 母子島遊水地から見た筑波山

    【今週の1枚】逆さ筑波山と朝日の絶景

    今回は、茨城県の筑波山です。標高は876mと低いですが、歴史ある名山として…

  2. 高尾梅郷の紅白梅

    【今週の1枚】高尾梅郷の紅白梅

    梅の名所は全国各地にありますが、今回は東京の西部にある高尾梅郷の梅の花を紹…

  3. 相模湾に昇る神秘的な朝日

    【今週の1枚】相模湾に昇る神秘的な朝日

    この写真を撮ったのは、1999年4月。当時の私は、まだ山歩き初心者でした。…

  4. 吹割の滝

    【今週の1枚】東洋のナイアガラ・吹割の滝

    群馬県沼田市にある吹割の滝(ふきわれのたき)は、名瀑100選にも選ばれてい…

  5. 雲取山の山頂でブルーモーメント

    【今週の1枚】雲取山、夜明け前、青い朝

    この写真は、雲取山の山頂で出会ったブルーモーメントの瞬間です。山の…

  6. 大樺沢の清流

    【今週の1枚】南アルプス・大樺沢の清流

    大樺沢(おおかんばさわ)は、日本第2位の高峰・北岳を流れ下る沢です。…

  7. 立山の御前沢氷河

    【今週の1枚】立山から望む日本初の氷河

    北アルプスの山々は、カッコいいですよね。特に人気が高い槍・穂高連峰と立山・…

  8. ダイヤモンド富士@高尾山

    【今週の1枚】ダイヤモンド富士@高尾山

    今や、絶景写真の定番ともいえる"ダイヤモンド富士"。今回は、高尾山の山頂で…

おすすめ記事

  1. 天狗岳タイトル写真3
  2. 赤岳タイトル写真1
  3. 槍ヶ岳から見た山並
  4. 雨飾山の登山道
  5. 北岳タイトル写真5
  6. 剱岳タイトル写真4
  7. 槍ヶ岳タイトル写真4
  8. 奥穂高岳と涸沢岳

カテゴリー

PAGE TOP