【登山用具の選び方】まずは中型ザックを買おう

登山といえば、ザック! というわけで、この記事ではザックの選び方について解説します。

もちろん登山では、ほかにも大事なものがたくさんあります。たとえば、登山地図と登山アプリはこちら登山靴はこちらのページで解説しています。

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最初は40L前後の中型ザックがお勧め


登山用品店へ行くと、たくさんのザックが売られています。日常使いに適したデイパックから、海外旅行でも使えそうな大型ザックまで、値段もサイズもさまざまです。

とりあえず近場の日帰り登山なら、普段使っているデイパックでもいいかと思います。

高級ブランド品や革製の小型リュックは避けた方がいいと思いますが、通勤や通学でノースフェース(THE NORTH FACE)等のデイパックを使っているなら、中身を入れ替えて1日だけ山に持ち出すのもありでしょう。ただ、山では土の上に直接置くことが多いので、そこは覚悟しておきましょう。

ノースフェース・ジェミニ

筆者が普段、タウン用で使っているノースフェース・ジェミニ。容量は22L

なお、街中ではデイパックのハーネス(肩ひも)を伸ばして、お尻のあたりまで下げている人を見かけますが山ではNGです。理由は2つ。

まず、登山は歩く時間が長くて急な上り下りもあります。ザックの揺れが大きいとジワジワ疲れが溜まります。また、木の枝などに引っかかりやすくて危険です。左右のストラップを引いて、ザックが背中に密着するように背負いましょう。

ノースフェース・ジェミニNG

山では、低い位置に背負うのはNG。疲れやすくて危険です

ノースフェース ジェミニ 22

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※現行品は筆者が使用している製品とデザインが異なります。

さて、何度か山歩きを経験して、「やっぱり、山には山用のザックが欲しい」となったとき、どんなものを選べばいいのでしょう。

結論から書くと、お勧めは40L(リッター)前後の中型ザックです。

ザックのサイズは、内容量を”リッター”で表します。前述のデイパックだと20Lから30Lくらい。40L前後が中型で、50L以上は大型ザックになります。最も大きいものは100Lを超えます。

大型ザックは、主にテント泊をする人のための製品です。テント泊の場合、テント自体に加えて下に敷くグラウンドシート、テントの中に敷くマット、シェラフ(寝袋)などが必要です。さらに食事も基本的に自炊なので、食材や調理道具も担いで歩きます。

これらが収まる容量の目安は、季節にもよりますが概ね60Lです。最近は、UL(ウルトラライト)といって道具を軽量かつ少なめにするスタイルもありますが初心者にはハードルが高いと思います。

最初から「自分はテント泊で」という人は、テントやシェラフと一緒に大型ザックを買うといいと思います。でも今は、そういう人は少ないでしょう。大学の山岳部くらいじゃないでしょうか。

中型ザックなら日帰りから縦走まで対応できる


私がお勧めする中型ザックというのは、容量が35~45Lくらいのものです。同じモデルでも、男性用と女性用で少し容量が異なることがあります。女性用は、たいてい少し小振りで肩や腰のハーネスを女性の体形に合わせてあります。

さて、このサイズの中にも実はいろいろな種類があります。ザックの中の空間を気室(きしつ)といって、中型のものだと1気室のものと2気室のものがあります。

1気室は、内部に仕切りがなくて上から下まで1つの空間です。2気室は、途中に仕切りがあって上3分の2くらいがメイン気室で、下3分の1くらいが2つ目の気室です。そして、ザック下部のファスナーを開くと、下の気室に直接ものを入れたり出したりできます。

また、ザックの上部が蓋(ふた)のようにメイン気室の上にかぶさるタイプが多いのですが、この部分を雨蓋(あまぶた)といいます。といっても、ある程度の撥水性はありますが本格的な雨をしのげるわけではありません。

最近は、ザックの上部をロールして(巻いて)荷物の量に合わせてコンパクトにできるものもあります。山で見かけることも多くなりました。このタイプの中には、防水性能を重視した製品もあります。

しかし、私が気に入っている、そして実際に使っているのは2気室で雨蓋付きのザックです。かつては、これが定番の形でした。

現在、愛用しているのはミレー(MILLET)というブランドのサースフェー(SAAS FEE)40+5という製品です。

サースフェー40+5

ミレーのサースフェー40+5

その前は、カリマー(karrimor)のリッジ40(ridge40)という製品を使っていたのですがモデルチェンジでリッジ40が1気室になってしまったので、買い替えの際にミレーに乗り換えました。

※登山用品店の店員さんの話では、以前のリッジ40は元々50Lに近い容量があったそうです。そのため、数年前のモデルチェンジでリッジ40を50に、30を40に名称変更したとのこと。つまり、「現在のリッジ50が、以前のリッジ40に相当する」といわれました。そして、現在のリッジ50は2気室です。

私が2気室のザックを愛用している最大の理由は、下の気室の一番手前にレインウェアを入れるためです。

山では、本当に急に大雨になることがあります。ポツリポツリと降り始めたと思ったら、次の瞬間には土砂降り、ほんの数分で全身ビショ濡れといった経験を何度かしているので、雨具はすぐに取り出せる定位置に収納しています。

もしも雨具がメイン気室の下の方に入っていたら、取り出している間にどんどん濡れてしまいます。

そして、雨具を出して中身が減った分はストラップを引くと気室を小さくすることができます。ザックは、肩や背中に近い位置に重心を集めると疲れにくいので、下が軽くなるのは良いことです。

また、雨蓋にもファスナーがあって、頻繁に出し入れする小物を入れることができます。つまり、真ん中にあるメインの気室、下にあるサブの気室、雨蓋という3ヵ所に荷物を分散して出し入れできる、この便利さが気に入っています。

あくまでも個人的な例ですが、私はざっくりこんな感じで使っています。

サースフェー40+5

主な荷物の定位置

なお、実際には、気室を区切る仕切りを外したり開いたりして2気室だけど1気室としても使える製品が多いです。つまり、1気室のザックを2気室にはできませんが、2気室のザックは1気室として使うことも可能です。特に最近は、2つの気室の仕切りが簡易的な製品が増えています。

この形の中型ザックなら、荷物が少ない日帰り登山から、小屋泊まりで2~3日の縦走登山、荷物が増える冬季の小屋泊まり登山まで対応できます。

荷物が少ないときは、雨蓋を下げたり下の気室を小さくしたりすることでザック全体をコンパクトにできます。荷物が多いときは、2つの気室に荷物を詰め込んで、さらに雨蓋を上に伸ばすことができます。この下の、1枚目の写真と2枚目の写真を比較してみてください。雨蓋の位置だけでなく、腰ベルトとザックの下端を比べると下にも伸びているのがわかります。

それでも足りないときは、かさ張るものや軽いものをザックの外に付けることもできます。こうした使い方は、外に付けたものが木に引っかかったりするので推奨できませんが、山ではわりと見かけます。

サースフェー40+5

荷物が少ないときはストラップで圧縮

サースフェー40+5

荷物が多いときは大きく使える

サースフェー40+5

かさ張るものを外側に付けることも

なお、ミレーにはサースフェー30+5という一回り小さい製品もあります。40+5は、基本は40Lだけど雨蓋を上に伸ばすと5L増えて合計45Lのザックとして使えるという意味。30+5なら、30Lプラス5Lで合計35Lです。

荷物の量は人それぞれですが、一般的な小屋泊まり登山なら30+5で対応できる人も多いと思います。私自身、30+5にするか40+5にするか悩みました。以前使っていたリッジ40(旧型)で容量いっぱい使い切ったのは数回で、いつも余裕がありました。そのため、次は少し小さめにしようと考えていたからです。

最終的に40+5にしたのは、普段はザックの外側に出しているカメラを雨のときザックの中に避難させるためです。その余裕を考えて大きい方にしました。また、北アルプスではヘルメット着用のコースが増えています。そのヘルメットをザックに入れることも考慮しました。

こうした事情がなければ、30+5を選んだかもしれません。

2024-ミレー サースフェーNX 40+5

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2024-ミレー サースフェーNX 30+5

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日帰り登山だけなら30Lクラスの小型ザック


前述のように40L前後の中型ザックで日帰り登山にも対応できるのですが、当面は日帰り登山だけ、いかにもな感じのザックは持ちたくないということなら30L前後の小型ザックもいいでしょう。

私も、長くカリマーのリッジ40でさまざまな登山に対応してきたのですが、数年前にドイター(deuter)のフューチュラ27(FUTURA27)という小型ザックを追加購入しました。

フューチュラ27

ドイターのフューチュラ27

理由は、地方の山へ行くことが増えたから。以前は、山小屋を利用して北アルプスや八ヶ岳などへ行くことが多かったのですが、コロナ禍で山小屋が閉鎖されたり宿泊者数が制限されて予約が取りにくい時期が続きました。

そのため、ここ数年は車で遠方へ行って車中泊しながら日帰り登山といった山行を続けていました。例えば、中国地方の大山と三瓶山へ行ったり、東北地方の八甲田山や蔵王へ行ったり。

また、冬から春にはトレーニングを兼ねて、高尾山や奥多摩など近くの低山にも行きます。こうした用途に合わせて日帰り専用のザックがあってもいいかな、と思ったしだいです。

そこで選んだドイターのフューチュラ27ですが、ポイントは腰ベルト(ハーネス)があること。できれば小型で2気室と思っていたのですが、さすがにこのサイズで2気室の製品はありませんでした。

腰ベルトですが、ザックは肩で背負うだけでなく、腰のベルトを締めて重量を肩と腰に分散するのが現在の主流です。腰ベルトがあるかないかで疲れ方が大きく変わります。中型から大型のザックには必須の機能といっても過言ではないでしょう。

デイパックのような小型ザックだと下部にストラップがあって、それを腰に回して止めることができます。しかし、これは重さを分散するためのハーネスではなく、ザックが左右に動くのを抑える振れどめです。

さて、日帰り登山とはいえ、イザというときに備えて雨具や予備の行動食などを持っていきます。できれば最低限の着替えも持ちたいですね。そうすると、日帰りでもそこそこの荷物になります。

そのため、小型ザックでも腰ベルトがあるところが気に入ってフューチュラ27を選びました。暑い時期に使うことも多いのですが、背中がメッシュで通気性がいいのも気に入っています。

2024-ドイター フューチュラ27

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テント泊を想定した大型ザックは多機能な65L


以前は、私は高い山に登るときは山小屋を利用していました。しかし、ひとつ問題があって、最高の絶景タイムである夕日や朝日の時間と食事の時間が重なることあります。山小屋では指定された時刻に食事をとらなければなりません。

宿泊客が少ないときや、夕日や朝日の名所となっている場所では食事の時間をズラしてくれることもあります。ただそれは、山小屋が気を利かせてくれただけで必ずそうなるとは限りません。特に混雑しているときは、まず無理です。

というわけで、時間が自由になるテント泊、少なくとも素泊まりで自炊という方法を考えたことが何度もあります。

さらに、北アルプスや八ヶ岳といったメジャーな山域を離れると避難小屋泊まりというケースが増えます。そうすると、シェラフとマット、食料を担いでいく必要があります。

そんなことを考えて、より大きなザックを買おうと前々から考えていました。

そして購入したのが、グレゴリー(GREGORY)のバルトロ65(BALTORO65)というモデルです。グレゴリーというと高級ザックで、以前はかなりの予算を覚悟する必要がありましたが、最近はだいぶ買いやすくなってきました。

バルトロ65

グレゴリーのバルトロ65

写真だと、サースフェー40+5を上に伸ばした状態と同じくらいに見えるかもしれません。しかし気室が太いため、より多くの荷物が入ります。また、重さに耐えられるように肩や腰のハーネスがしっかりしていて、同じ量の荷物を背負ったときパルトロ65の方が疲れにくいと思います。

ザックの形としては雨蓋付きの2気室ですが、上下の気室の区切りは簡易的です。一方、収納スペースや調整のストラップが多い点は上級モデルらしさを感じます。

まだ使い込んでいませんが、テント泊の道具をすべて入れても背負いやすいのは確かです。小屋泊まりより明らかに荷物の量と重さが増えても、背負ってしまうとさほど差を感じません。長い付き合いになりそうなザックと出会うことができました。

なお、私が使用している(上の写真に写っている)のは2021年モデルです。バルトロ65は2022年にモデルチェンジがあって、一部仕様が変更されました。以下のリンク先は現行モデルです。

2024-グレゴリー バルトロ65

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まとめ


登山の荷物は、1泊2日だからといって日帰りの2倍になるわけではありません。もちろん、2泊3日になっても3倍にはなりません。レインウェアなどの装備は、日帰りでも小屋泊でも背負って歩きます。つまり、あまり量が変わりません。

ということで、今は日帰り登山が中心の人でも40L前後の中型ザックを選んでおくのは十分ありだと思います。特に、雨蓋があったり、ロール型で荷物の量に応じて高さを変えられるタイプだと幅広い登山に対応できて良いでしょう。

なお、中型から大型のザックは使う人の身長に合わせてL・M・Sといったサイズに分かれていることがあります。あるいは、レディースモデル(女性用)があったり、ザック全体の高さ(長さ)を調整できるものもあります。

またザックは、たくさんのストラップを調整して身体にフィットさせることが重要です。これによって疲れ方がまったく違います。そうしたことも含めて、登山用品店で実際に背負ってみることをお勧めします。

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